おすすめの本 パリ・東京井戸端会議
パティシエの営む食堂ということで
パティスリーにちなみ、フランスにゆかりのあるおすすめの一冊をご紹介。 1970年から1973年までパリの映画監督に嫁いだ岸恵子さんと 映画評論家の秦早穂子さんの二人の女性の往復書簡。 東京とパリの快活素敵な 当時40歳の女性の間を往復して綴られた書簡たち。 家や仕事や恋愛や文化や世界情勢まで 内容は様々で、たまに80年代に生まれた私でも知ってるニュースとか 映画とかがでてきて、タイムトラベル気分を味わえます。 特徴的なのは、二人が本業の女優や映画評論についてのことでなく 70年代初頭のパリと東京の普通の生活の「窓」からの視点で綴られていること。 70年代初頭といえば、プラハの春があって、ベトナム戦争があって 混沌としている世界情勢の中で日本は景気がよくなっていく頃。 そして、まだまだ東京とパリは遠かった時代。 (本人達は本の中で近くなったと言っているけれど) そんな中での、 真っ只中のベトナム戦争に対する恐怖とか、 川端康成の自殺とか、 映画ラストタンゴインパリの衝撃とか、 終戦後の日本の転換の早さからの幼い頃のとまどいとか、 70年代の働く独身女性の心とか。 40歳、大人の女性の友情を軸に置いた言葉のやり取り。 本自体絶版の為、古本じゃないと手に入らないので 手にとった時から、古本独特の手触りも相まって 外も中も時代の空気を深々と纏っている本です。